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適正在庫の考え方・求め方

適正在庫の考え方・求め方

著者 勝呂隆男
ISBN 4-526-05178-0 C3034
出版社 日刊工業新聞社
出版年 2003年9月
定価 1,900円(税別)
好評につき2017年9月第27刷決定

在庫削減は近年の中心的な経営課題である。本書はその理論的アプローチ方法と実践的技術を平易に解説する。
欠品を起こさずにどこまで在庫を減らせるかという限界値を理論的に求める技術を、基礎的な知識から最新の研究開発成果まで実践的に解説する。
ERP/APSに適合した安全在庫の設定方法として当社開発の先進的在庫理論「APIM」も一部紹介した。

好評既刊 「適正在庫のマネジメント」 「適正在庫のテクニック」 「適正在庫の定め方・活かし方」 と併せての「ザイコ4兄弟」をよろしくお願いします。
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はじめに

 在庫削減は近年の中心的な経営課題である。CIM、SISの時代から最近のSCMまで経営革新活動の成果の多くは在庫削減によってもたらされている。在庫を多く抱えることは、それだけ多額の資金を眠らせることになり、経営効率を下げる結果となる。キャッシュフローの減少は経営体質を悪化させ、企業価値の下落を招くことにもつながる。また、つくりすぎによる在庫は、陳腐化によるリスクを招くと同時にさまざまな効率低下の原因となる。
 しかし、やみくもに在庫を減らそうとすることの弊害も多い。在庫にはさまざまな変動を吸収するバッファーとしての機能があり、これを無視して手持ち在庫をいきなりゼロにするようなことをすると現場が混乱し、かえってトータルの在庫量を増やす結果にもなる。
 筆者の経験では、在庫の適正水準をきめ細かく設定し、きちんと管理することが在庫削減の近道である。そして、欠品を起こさずに必要最小限の在庫を持つためには、在庫の適正量を正しく求める技術が必要とされる。

 本書は、在庫を適正水準に保つための考え方と実践的な技術を解説することを目的としている。古典理論の説明から最新の研究成果の紹介まで実務経験を踏まえた実践的な解説を目指した。
 適正在庫の理論は古くから研究され、数学的な手法も整備されている。経営工学分野の使える理論として一部の実務家たちには熱心に支持されてきた。筆者もその一人である。しかし、正しい理解のもとに適切に活用される機会が少なく「使えない理論」と誤解されることも多々あった。
 そこで、本書では適正在庫理論の正しい理解を得るための実務的な解説書を提供し、在庫の適正化に対して理論的なアプローチをとろうとする実務家の方々の一助となることを願っている。生産管理や在庫管理・物流管理の実務家の方々や、ERP・APSなど業務パッケージソフトのベンダーSEやコンサルタントの方々のお役に立てれば幸いである。
 適正在庫の理論は統計的なデータ処理を必要とするために、かつては簡単に使いこなせるものではなかった。ところが近年ではパソコンで手軽に試算やシミュレーションが実行できるし、必要なデータも企業の情報システムにより収集・蓄積されるようになった。徹底活用して大きな成果をあげる環境が整ったといえる。読者の方々には、本書の内容を理解し実践的に活用して大きな成果をあげていただきたいと願っている。
 なお、本書を執筆するにあたり、日本インダストリアル・エンジニアリング協会 高城博美氏と日刊工業新聞社 加古邦明氏には、貴重な機会を与えていただき非常に感謝している。この場を借りて御礼申し上げます。

    2003年8月
    勝呂 隆男

目次

推薦のことば
はじめに


1章 在庫管理の現状

1. 1 日本企業の在庫水準 1
1. 2 在庫はサプライチェーン全体にまたがる全体最適問題 4
1. 3 「在庫は悪だ」から「在庫を管理していないことが
悪だ」へ 6


2章 在庫とは何か

2. 1 企業の資金の流れ 9
2. 2 在庫の形状分類 11
2. 3 在庫はなぜ発生するか 12
2. 4 在庫が必要とされる理由 15
2. 5 在庫の害 19
2. 6 在庫の目的分類 22
2. 7 在庫の把握の仕方 24
2. 8 在庫ポイントと生産形態 27

3章 適正在庫の考え方(古典的OR理論の解説)

3. 1 身近な例で考える 29
3. 2 総枠管理と単品管理 31
3. 3 在庫を積極的に持った方が結果的にトータル在庫が
減る場合が多い 32
3. 4 入庫と出庫の同期化で在庫を適正にする 32
3. 5 発注点方式・定期発注方式と安全在庫 35
3. 6 安全在庫の考え方 37
3. 7 変動をどうとらえるか 39
3. 8 安全係数の考え方 43
3. 9 リードタイム日数分の変動をどうとらえるか 46
3. 10 リードタイムの変動をどう考えるか 49
3. 11 正規分布と中心極限定理 50
3. 12 発注点方式の安全在庫・発注点・発注量と理論在庫 52
3. 13 定期発注方式の安全在庫・発注量と理論在庫 55
3. 14 リードタイム、発注サイクルと理論在庫 58
3. 15 リードタイムの考え方 60
3. 16 その他の在庫管理方式 62


4章 適正在庫の求め方と活用方法

4. 1 集めるデータと集め方 69
4. 2 データがとれないときにどうするか 74
4. 3 データの集計・処理・計算方法(Excelのテクニック) 76
4. 4 在庫シミュレーションによる確認 80
4. 5 算出した適正在庫の活用方法 83


5章 在庫適正化の具体的な進め方

5. 1 販売拠点・物流拠点の場合 91
5. 2 工場製品在庫の場合 100
5. 3 現場の仕掛在庫の場合 104
5. 4 部品・材料在庫の場合 109
5. 5 VMIの場合 110
5. 6 内示方式の場合 110
5. 7 生産管理パッケージを導入する場合 111


6章 最新の適正在庫理論

6. 1 従来の理論の限界について 113
6. 2 間欠需要に対応した新理論 114
6. 3 リードタイムが変動する場合 116
6. 4 需要分布が正規分布に従わない場合 117
6. 5 MRP・ERP・APSに適合する新理論(APIM) 124

索 引

推薦のことば

日本IE協会会長 (株)東芝常任顧問    山本 哲也

 「在庫は諸悪の根源なり」として在庫発生のメカニズムにメスを入れて経営の仕組全体までを改革したトヨタ生産方式は、今日では別名SCM(サプライチェーン・マネジメントシステム)という経営用語化して、知らない人はいない。部分最適の組織活動を商流に沿って全体整合のとれた商品共同体にリエンジニアリングする、技術革新のスピードアップにより商品の新陳代謝が加速していることに対応して在庫をミニマムにする、あるいは資金の回転率をアップするなどの経営視点から、SCMの確立を経営の最重要課題として真剣に取り組んでいる企業は現在でも多い。
 ところが、そういった経営視点からの「在庫」問題が強調される余りに、生産管理的視点での在庫問題が等閑視されすぎているのではないか、少なからず懸念しているところである。潤沢な「在庫」を抱えないと回転しない経営システムは抜本的に改革すべきは当然であるが、生産サイクルと市況変化との同期化、調達リードタイムや効率的設備投資を考慮した最適生産能力の設計に当たって、適正な「在庫」が必要であることもまた真理である。
 本書はそういった視点に立って、「適正在庫」の考え方、計数的算出の仕方などを、理論的にまた実務的・実践的に解説している。さすがに企業において実践してきた経験を踏まえて、例えば理論的に算出した適正値を過去の実績値に当てはめてシミュレーションして見せることによって、在庫管理実務者を納得させることを推奨するなど、プラクティカルである。日本IE協会ではそういう著者の姿勢を高く評価してここ数年、協会のレギュラー講座「適正在庫理論とその適用実践コース」の講師をお願いしているが、その人気は極めて高い。また一方、著者は日本経営工学会の研究活動にも積極的に参画するなど、先進理論の修得にも余念がなく、知識も新鮮である。
 日本の経営のやり方は、わが国の文化的特徴からか、経営管理においても日常的管理においても極めて情緒的・アナログ的である。ボーダーレスな国際市場においてメガ・コンペティションを戦い抜くためには、もっと科学的管理が重要視されるべきと考える。そういう意味からも本書が、単に在庫管理実務者だけでなく、経営の意思を具体的に施策展開し指導する立場にある部課長にも広く読まれることを期待するものである。

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