ホーム > 著書・論文 > 適正在庫のマネジメント
適正在庫のマネジメント

適正在庫のマネジメント

著者 勝呂隆男
ISBN 4-526-05401-1 C3034
出版社 日刊工業新聞社
出版年 2005年1月
定価 2,000円(税別)
好評につき2016年第9刷決定

「在庫適正化」の立場から生産システム、サプライチェーン全体の最適化を図るために、システム改革や現場改善をどう進めたらよいかについての考えを述べる。製造現場(改善現場)と情報システム部門(システム構築)の整合性を追及しながら、設計、製造、販売の各部門が適正な水準にまで在庫を削減するための方策と取組みを紹介。核となる技術である新しい在庫理論-APIMについても詳説。好評を博している「適正在庫の考え方・求め方」の第2弾。マネジメント層必読の1冊。

好評既刊 「適正在庫の考え方・求め方」 「適正在庫のテクニック」 「適正在庫の定め方・活かし方」 と併せての「ザイコ4兄弟」をよろしくお願いします。
適正在庫の定め方・活かし方セミナーを主催しております。 詳細
適正在庫算出システム  APIM  を販売しております。 詳細

はじめに

 本書は、「在庫適正化」の立場から生産システム、サプライチェーン全体の最適化を図るために、システム改革や現場改善をどう進めたらよいかについての考えをまとめたものである。
  部分最適に陥らずに全体最適をめざした改革・改善活動を展開するためには、様々な改善施策の相互関係を的確に把握したうえで、系統的なアプローチをとる必要がある。そのためには、生産システムを統合的に捉えて現場改善とシステム改革を有機的につなげる視点が不可欠であり、改善施策を立案し、改革を推進するうえで、在庫はもっとも有力な切り口となる 。
 筆者はこれまで、製造業の改革・改善活動の実践において、現場改善を基本にシステム改革を進め、理論研究にもとづくIT活用を積極的に推進することを心がけてきた。現場を改善するミクロの視点とシステムを改革・構築するマクロの視点双方を備え、理論的アプローチと実践的アプローチの2つのアプローチを同時に進めることをめざしてきた。
 物と情報の流れでシステムを見る。お金の動きでシステムを見る。時間の消費でシステムを見る。人の組織でシステムを見る。等々、さまざまな切り口で生産システムをとらえてきたが、最も有効だったのが在庫の視点である。在庫適正化の視点で見ることで生産システムの全体理解がすすみ、一本縦糸の通った見方が出来たように思う。
  また、生産システム、サプライチェーン全体の改革・改善を推進する際には、その分析、計画、改革・改善の推進、評価のすべてのフェーズにおいて適正在庫がキーとなる。特に社内説得や取引先との交渉において組織を動かすためには、適正在庫水準の提示が強力な武器となった。
  在庫を基点にシステムを理解し、改革・改善を推進するためには、適正在庫を理論に基づき精密に求める技術が必要とされる。従来不可能とされてきたことであるが、筆者開発の新理論により適正在庫の精密・正確な算出が可能になったのである。現在、この新しい技術をAPIM (エイピム:Advanced Proper Inventory Method )と名づけて、さらなる研究開発と実践・適用を進めている。
 この技術により、サプライチェーン上のどこにいくつ在庫を保有すればよいかを正確に求められるようになり、各種改善施策による在庫削減効果を精密に見積もり、相互の因果関係を正確に把握することが可能となった。
 本書は、在庫を基点とした生産システムの統合的なとらえ方と改革・改善の進め方を解説するとともに、そのキー技術である新しい在庫理論 を紹介することを目的に執筆した。前著『適正在庫の考え方・求め方』では古典理論の解説に主を置いたが、今回はより広い視点での在庫問題解決策を述べている。また、その後さらに研究が進み、完成をみた新理論についても詳細に紹介している。
 この本が、在庫削減により経営改革を目指す経営者の方々、在庫マネジメントの統合的な理解を目指す実務家の方々、最新の在庫理論を研究される研究者や学生の方々の一助となれば幸いである。

2004年12月
勝呂 隆男

目次

はじめに


1章 間違いだらけの在庫削減
1.1 何のための在庫削減か
1.1.1 在庫を減らすと利益が減る?
1.1.2 在庫は最大の経営リスクである
1.1.3 在庫削減の大号令で在庫が増えた

1.2 在庫の功罪
1.2.1 在庫の害
1.2.2 在庫を持つ理由

1.3 在庫管理と在庫マネジメント
1.3.1 在庫管理と在庫マネジメント
1.3.2 大切なのは適正な在庫基準を設定すること
1.3.3 系統的なアプローチ

2章 リードタイムを短縮する
2.1 リードタイムのとらえ方と分類
2.2 要求リードタイム・納入リードタイムと実効リードタイムの考え方
2.3 リードタイムの短縮方法
2.3.1 計画リードタイムの短縮
2.3.2 手配・調達リードタイムの短縮
2.3.3 生産リードタイムの短縮
2.3.4 配送リードタイムの短縮

3章 需給調整機能を見直す
3.1 需給調整とは
3.2 3段階の需給調整
3.3 調整サイクルの多頻度化
3.4 高度なスケジューリング
3.5 成長期と衰退期の需給調整

4章 適正な在庫基準を設定する
4.1 どこに在庫を持つか
4.2 いくつ在庫を持つか
4.2.1 適正在庫の考え方と求め方
4.2.2 統計的安全在庫(古典理論)
4.2.3 許容欠品率の考え方
4.2.4 古典理論の限界と新しい適正在庫理論
4.3 基準値のメンテナンス

5章 在庫ポイントを絞り込む
5.1 在庫拠点の水平統合と垂直統合
5.2 工程連結と間締め・セル生産

6章 アイテム数を減らす
6.1 製品・商品アイテムの整理整頓
6.1.1 商品コードと製品コードの統一
6.1.2 見かけのアイテムを減らす
6.2 部品・材料のアイテム削減
6.2.1 部品削減
6.2.2 部品・材料の標準化・共通化と部品種類数削減

7章 基本は現場改善と目で見る管理
7.1 5Sと赤札貼り
7.2 棚札
7.3 モーションクリニック
7.4 在庫推移グラフ

8章 改善にも戦略がある
8.1 地道な改善だけでいいのか
8.1.1 勝手3分割
8.1.2 ムダとりの為のムダとりの空しさ
8.2 改善戦略検討事例(変種変量生産調査研究事例)
8.2.1 変種変量需要と変種変量生産
8.2.2 変動を小さくすることと対応力を強くすること
8.3 変種変量生産への取り組み方
8.3。1 変動そのものを小さくする平準化
8.3.2 変動対応力の強化

9章 新しい在庫理論
9.1 系統的アプローチ
9.2 新しい適正在庫理論(APIM)
9.2.1 実効リードタイムにより未来在庫に対応
9.2.2 リードタイムの変動に対応
9.2.3 間欠需要に対応
9.2.4 定期発注方式の新しい考え方
9.2.5 需要の周期変動に対応
9.2.6 欠品ゼロの安全在庫を求める
9.2.7 需要予測誤差に対応
9.2.8 歩留まり変動に対応
9.2.9 採り数の変動に対応
9.2.10 ERP・APSの基準在庫に対応
9.3 APIMによる安全在庫算出例
9.4 在庫削減プロジェクトのすすめ方


おわりに

索引

おわりに

 本書に書かれている内容は筆者がこれまで仕事や研究活動を通じてお世話になった方々からいただいたさまざまな財産をもとにしている。以下に、それらを振り返りながら関係者の皆様に謝意を表したい。
 東芝入社2年目で生産システムの右も左もわからなかった筆者に、在庫理論を伝授してくれたのは、生産技術研究所主任研究員(当時) 高城博美氏である。在庫削減を目指したCIM(Computer Integrated Manufacturing)プロジェクトを通じて理論手法を実務に適用する最初の経験となった。プロジェクト全体を指揮したのは、本社部長(当時)の山中美昭氏と山本哲也氏。山本氏はのちに副社長として全社の在庫削減運動を指揮された。現在も日本IE協会会長としてご支援をいただいている。生産技術研究所では、研究主幹(当時)の高橋戡夫氏から第6章に述べた設計改善の方法論を学んだ。
 独立後に開発した在庫理論研究のきっかけとなったのは、日通総合研究所の山田健氏である。氏の論文により、古典理論式を批判し改良すること自体にためらいがなくなったのが研究活動の始まりである。
 理論研究では日本経営工学会会長、青山学院大学教授の黒田充氏にご指導をいただいた。経験的直感的な計算式をシミュレーションで実証すればいいと思っていた筆者に、「これは願望式にすぎず、理論研究の論文になっていない」とのご指摘をいただいた。これがきっかけで数学的な検証を深め、理論的に深いところでの発見を重ねることになったのである。学術論文をまとめる段では、東京工業大学助教授 曹徳弼氏に海外の先進研究について多くのご指導をいただいた。
 在庫適正化のアプローチを体系化するにあたり多くの示唆をいただいたのは、日本経営工学会特別委員会の場においてである。委員長のトヨタ自動車技監 銀屋洋氏をはじめ、ソニー生産革新センター長 金辰吉氏、東芝テック生産本部長 落合信夫氏、日立製作所ビジネスソリューション事業部 光國光七郎氏、トヨタ自動車コーポレートIT部 小谷重徳氏、同社グローバル生産推進センター 酒井浩久氏、日揮ビジネスソリューション事業部 佐藤知一氏、日本経済新聞社論説委員 後藤康浩氏、日野自動車グローバル生産企画室 小鹿野孝之氏、愛知工業大学教授 大野勝久氏、名古屋工業大学教授 田村隆善氏、愛知学院大学教授 飯島正樹氏とのディスカッションを通じて、トヨタ生産方式のトヨタ自動車における実際と導入企業における考え方の違いなどについて多くを知り、発想をふくらませることができた。
 生産システムの基本、なかでもインダストリアルエンジニアリング(IE)と標準化について基礎を授けてくれたのは大学時代の恩師である早稲田大学名誉教授 古川光氏と同教授の吉本一穂氏である。吉本氏には現在でも公私ともどもご指導いただいている。
 以上の皆様方に心より感謝致します。
 本書が世に出るにあたり、美研クリエイティブセンター 加古邦明氏、日刊工業新聞社 奥村功氏には貴重な機会をいただき感謝している。

 最後に、カエサルからニュートリノまで興味の尽きぬ話題を提供して毎日の会話で筆者の頭を活性化し、まさにミューズ(創造の女神)であった妻佐代子に心より感謝の意を表したい。

2004年12月
勝呂隆男

PAGE TOP