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売上を伸ばす 適正在庫の定め方・活かし方

売上を伸ばす 適正在庫の定め方・活かし方

著者 勝呂隆男
ISBN 978-4-526-07324-3 C3034
出版社 日刊工業新聞社
出版年 2014年11月
定価 2,000円(税別)

好評「適正在庫」シリーズの新刊。適正在庫基準値を把握した上で、何をコントロールすれば最適な在庫管理が行えるかについて指南。売上を伸ばすための適正在庫の運用徹底に特化し、生産管理部門のみならず調達・営業担当者も理解できる実践書に仕立てた。

好評既刊 「適正在庫の考え方・求め方」 「適正在庫のマネジメント」 「適正在庫のテクニック」 と併せての「ザイコ4兄弟」をよろしくお願いします。
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はじめに

 適正在庫を実現することはとても簡単です。
 安全在庫・発注点・補充点の適正在庫基準値を正しく設定して、あとはルール通りに粛々と在庫の出し入れをするだけだからです。ただし、適正在庫基準値をきちんと設定することが必須です。この値が小さ過ぎると欠品多発となり、大き過ぎると過剰在庫をもたらすこととなります。
 既刊の適正在庫3部作(「適正在庫の考え方・求め方」「適正在庫のマネジメント」「適正在庫のテクニック」)では、私が古典理論と名づけた統計的安全在庫設定手法を中心に在庫理論の基礎を解説しました。しかし、古典理論は文字通り“安全”在庫を求める技術であり、多過ぎず少な過ぎないという“適正”在庫を実現するものではありませんでした。
 3部作でも紹介してきた適正在庫理論APIMは、必要最小限の安全在庫を算出することで適正在庫を実現する技術ですが、前著を執筆したときには実証研究も含めてまだ研究途上にありましたので、控えめに紹介するにとどめました。その後、この技術がほぼ完成の域に達し、数多くの企業で在庫適正化に成功したことから、本書では「適正在庫基準値がわかる」ことを前提として適正在庫の実現方法を執筆することにしました。
 その一番の結論が冒頭に述べた、「適正在庫基準値がわかれば在庫適正化は簡単」だということです。あまりに簡単過ぎて一冊の本を成すには情報量が不足するほどです。
 本書のタイトル「適正在庫の定め方・活かし方」のうち、“定め方”は適正在庫基準値を算出する技術がいかにして生まれたのかの秘密を明らかにすることで、その考え方をより深く理解していただけるように執筆しました。もう一方の“活かし方”は、その技術の生まれ方を知った上で、適正在庫基準値をよりよく活かしていただくことを願っての内容です。
 活かし方のポイントは、売上を伸ばすことです。コスト削減や在庫削減、ムダ排除などの活動に世の人々は疲弊しています。それよりももっと伸びよう、成長しようという価値観がベースにあり、在庫を適正化することで、みんなで“はっぴぃ”になろうという思想が本書には込められています。
 そういう意味で、この本を工場の生産管理・在庫管理担当者・技術者だけでなく、本社経営スタッフや営業部門の方々にもお読みいただきたいと願って書きました。少し欲張りますが、より広く主婦や学生の方々にも、適正在庫の考え方を理解していただきたいと思っております。
 そのため、3部作までとは執筆方針を少し変更しました。これまでは、論理的な矛盾や重複のない体系を構築し、作品として提出するという技術者としての発想が強く表れていましたが、本書では読者にわかりやすく直接語りかけようという姿勢に変えました。
 これまで以上に、より多くの方々につながっていくことを願っております。

著者

目次

はじめに

第1章 プロローグ 地頭で考える適正在庫
  1.1 スタバカードのチャージ点に着目してみる
  1.2 卵の適正在庫について考える
  1.3 最小限の在庫基準を設定することからスタート
  1.3.1 リードタイム中需要量
  1.3.2 確率的最大値
  1.4 営業がカギを握る在庫適正化
  1.4.1 欠品の弊害を本当にわかっているのは営業マン
  1.4.2 過剰在庫の弱み
  1.4.3 在庫保有で売上増
  1.5 適正在庫をもっと多くの部門に、人々に

第2章 改めて考える「適正在庫とは何か?」
  2.1 適正在庫の算出技術は決着がついた
  2.2 多過ぎる在庫と少な過ぎる在庫
  2.2.1 過剰在庫と過少在庫が混在するという実態
  2.2.2 多過ぎるときと少な過ぎるときの弊害
  2.2.3 欠品の弊害
  2.2.4 欠品で顧客を失う
  2.2.5 過剰在庫で弱みを握られる
  2.2.6 積極的な過少在庫戦略の危険性
  2.2.7 行き過ぎた在庫削減
  2.3 発注点の考え方から
  2.3.1 リードタイム中需要量
  2.3.2 リードタイム中需要量の確率分布
  2.3.3 リードタイムは離散確率分布でとらえよう
  2.3.4 工学的時間論へ
  2.4 安全在庫とはそもそも何だろう
  2.5 適正在庫をちゃんと定義する
  2.5.1 適正在庫の定義
  2.5.2 最小限の安全在庫
  2.6 間欠需要と突発需要
  2.6.1 間欠性を考慮した需要分布のとらえ方
  2.6.2 間欠需要品目
  2.6.3 突発需要品目
  2.6.4 間欠需要品目の安全在庫はAPIMでないと算出できない
  2.7 リードタイムは変動する
  2.8 未来在庫を考える

第3章 適正在庫で売上を伸ばす
  3.1 発注点をきちんと設定して店舗拡大!
  3.2 適正在庫の見える化で売上増億円!
  3.3 MRP安全在庫の設定で欠品が1/に
  3.4 納期短縮と品揃え強化で売上増を!
  3.5 安全在庫の本当
  3.5.1 安そも研究
  3.5.2 複数種類の安全在庫
  3.5.3 個別安全在庫の重ね合わせ計算
  3.5.4 ピカソロジック
  3.5.5 アパレル産業におけるひと山勝負商品の安全在庫

第4章 需要予測は毛筆でするべし!
  4.1 天気予報の発想から
  4.2 予測のはずれ方は2種類しかない
  4.3 需要予測は幅をもって行うべし
  4.4 需要予測誤差吸収安全在庫
  4.5 盲点は需要予測対象期間
  4.6 発注数の計算
  4.7 関連事象確率依存型需要予測

第5章 リードタイムと欠品率の本当
  5.1 欠品率とはそもそも何だろう
  5.2 リードタイムの本当
  5.2.1 購買品は発注日から納品日までの日数分布
  5.2.2 発注点生産の場合は生産指示日から倉入れ日まで
  5.2.3 在庫量を見ながらの高度なオペレーションの場合
  5.2.4 定期発注方式の場合は、リードタイムは直接効いてこない
  5.3 節約せずにとにかく記録しておくこと
  5.3.1 リードタイム
  5.3.2 欠品記録
  5.3.3 デイリーの在庫実績

第6章 適正在庫算出システムの活用でわかったこと
  6.1 在庫適正化はとっても簡単!安全在庫をちゃんと決めれば
  6.2 シミュレーションが大事!
  6.3 バカのひとつ覚えのリードタイム短縮ではダメ!
  6.4 サプライチェーン全体最適のシミュレーションも可能に!
  6.5 以上の発見をもたらしたAPIMの機能とは?
  6.5.1 基本機能
  6.5.2 豊富なシミュレーション機能とエンジニアリング機能
  6.5.3 基本関数
  6.5.4 便利関数

第7章 適正在庫にまつわる研究の最新事情
  7.1 ピカソロジックとマンレイ・ソリューション
  7.2 リードタイムから工学的時間論へ
  7.3 ヒッグス粒子発見!
  7.4 工学的時間論2
  7.5 工学的時間論から「はっぴぃ分布仮説」へ
  7.6 お休みオークション
  7.7 作戦J

エピローグ ゴールを定めない経営

索引

エピローグ ゴールを定めない経営

 この本は、拙著である適正在庫3部作の最後となった「適正在庫のテクニック」が発行された2006年以降に筆者が経験し、考えたことを中心に執筆しました。翌2007年には世界金融危機が勃発し、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災・原発事故が発生するなど激動の数年間でありました。
 原稿の多くは、そんな2011年に始めた月刊「工場管理」誌連載と、今年春に始めた週刊メルマガの記事に依っています。月刊誌連載も週刊メルマガも、タイトルは「適正在庫の広場」です。
 広場に人々が集うように、数多くの出会いと出来事がありました。より広い視点で振り返ると、世界の枠組みそのものが激変してきた時代と言えると思います。

 このように環境が激動する時代には、初めに考えていた計画や目標として定めていたゴールなどは簡単に吹っ飛んでしまいます。個人としての生き方もそうですが、小規模ながらも会社経営をしてきての経験でもそうです。経営学の勉強では、PDCAサイクルの重要さを学びましたが、P(PLAN:計画)通りに事業を進めることの困難さが増しています。
 少し前に、「ザ・ゴール」という小説仕立てのビジネス書が流行しました。制約条件の理論(TOC)という手法をベースに、システムの目的を継続的に最大化することを狙うという管理哲学を説いたものです。しかし、今日ほどゴールを定めることと、ゴールを定めての経営が難しい時代はないのかもしれません。
 そんな背景の下で適正在庫について考えていますと、在庫の適正化というのは、売上や利益の達成目標を定めて行う経営とは異なり、経営体質を改善していく経営方策なのだということに気がつきました。すなわち、在庫を適正化するということは、ダイエットと同じく体質を良好な状態に維持することだからです。
 どんな環境変化が起ころうとも、追随していき、生き残ること、逆に成長の糧とできるような強靱な経営体質を身につけていく経営手法の1つに在庫適正化を挙げることができます。ですから、あえて「ゴールを定めない経営」として、在庫適正化を位置づけてもいいように思います。
 これからも環境変化の激動はさらに続いていくことと思いますが、そのような時代には地頭で考え、創意工夫を重ねていくことが大切です。そういう意味で、この本がそんな時代の1つの道しるべになればいいな、と考えています。
 最後に、本書の書き出しのエピソードである、「スターバックス カード」におけるチャージ点の発想を与えてくれた妻の佐代子に心からの感謝を捧げます。正直にお話ししますと、突発需要対応安全在庫の技術については妻の発明と言うべきものです。執筆期間中に不規則になりがちな生活を乗り切ることができたのも、妻の献身的な支えがあったからこそです。
 また、月刊「工場管理」誌連載時に素敵なイラストを描いてくれている神林光二氏にも感謝申し上げます。毎月、氏が描くイラストを楽しみに連載執筆が続けられたといっても過言ではないでしょう。本書にもそのいくつかを掲載しました。
 そして、早稲田大学文学部の西崎文茄さんにもお礼を申し上げねばなりません。本書は前3部作とは趣を少し変えて、読者に語りかける本を目指したのですが、そのための助言を、週刊メルマガ発行のお手伝いを通じて数多くいただきました。
 日刊工業新聞社の矢島俊克氏と久保敏也氏には最後までご面倒をおかけしました。辛抱強くご支援くださったことに心より感謝申し上げます。

2014年初秋
葉山えんじに庵にて
タイムエンジニア
勝呂 隆男

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